クリスタが実装を見送った「画像生成AIパレット」の何が問題なのか？

セルシスは画像生成AIがクリエイターの権利を侵害してしまう可能性を踏まえ、「CLIP STUDIO PAINT Ver.2」に搭載予定だった「画像生成AIパレット」（Stable Diffusion）の提供を中止すると発表した。

清廉潔白なクリエイターたちの反発（エゴ？）に押し切られたようだ。

他ユーザーの賛否に言及するつもりはない。ただ個人的に楽しみにしていた機能の一つだったので残念。

ワイは今回のセルシスの判断に少し疑問を持ってしまったクリスタユーザーの一人である。つまり詳細を深く理解せぬまま沸き上がる感情にまかせて記事を書いてしまった、、のである。

そして凹まされたとはいえ、セルシスがユーザーの声に耳を傾ける優良企業であることだけは理解した、、今どき珍しいよね（汗）

※「Stable Diffusion」が要求するPCスペックが心配。

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クリスタが画像生成AIパレットを実装すべき理由

ピクシブなどイラスト投稿サイトやSNS（巷）では、すでに大量のAI作品が出回っている。この新しくて素晴らしいテクノロジーを安易に手放してしまうのは正しい判断なのか？

一定数のクリスタユーザーが他所の画像生成AIを利用することを考えればなおさら疑問だ。

AIが誰かの著作物（データ）を利用（学習）して画像を生成する場合、倫理的にどんな問題があるのかよく分からない。人間であれば上手いイラストレーターのテクニック（絵柄）を盗むのは普通だし、漫画家だって写真をトレースして背景や小物を描いたりする。写真家であれば街の風景を切り取る際に、映り込む人々の肖像権を考慮しないのと同じではないだろうか。

作品が誰かの権利の一部と干渉することは珍しくないが利益の還元を求められたりしない。それは表現の自由の範囲内と判断されるからだ。

創造性は誰かの著作物（権利）を少なからず踏みにじってきたし、そうやって進化してきた。AIはそんな人間を模倣しているに過ぎない。

そして画像生成AIに至っては、既存作品の焼き増しではなく、知的創造の領域に突入している。それゆえクリエイターが畏怖の念を抱くのかもしれない。

ただそれは杞憂に終わる。

AI絵師の作風？

AI生成されたイラストの特徴として類型的なパーツ（処理）の完成度の高さがある。試しにピクシブで初音ミクを検索してみる。流行りを抑えた顔の可愛さや衣装デザインに精通し、細部の描き込みや完成度には驚くばかり。ところが全体的な骨格のバランスや指先の動きなど不自然な部分も目につく。

背景の描画に関しても、AIがコンセプトや構造を理解出来ないためか許容できないレベルで不自然（大胆）な場合もある。そこには何も語らない巧さだけが漂っている感じだ。

そういった規則性や不規則性の揺らぎがAI絵師の特徴（AIっぽさ）に思える。

AI絵師のスキルはすでに相当なモノだが、現状は人間の脳をハックするほどの創造性（多様性）は持ち合わせていない。

ただし実力のある絵師が着想を得る手段の一つとして、画像生成AIを利用した場合は話が違ってくるだろう。表現の幅が広がったり、作業効率の向上といった絶大な複利効果が期待できる。

この話は絵師に限られたモノではないが、そういったスタイルは咎められるものではない。

過去にはデジタルを否定しアナログ表現に固執する風潮もあったが、ツールの進化・浸透によってその理由を見失ってしまった。画像生成AIに関しても同じだろう。

いずれ人間の知恵と融合しそれが常識になっていく。

※現状デジタルとアナログは互いの価値を相互に担保しているような状態。

画像生成AIの恩恵は？

AIが生成するイラストは既存作品のコピーやコラージュではない。思考部分の仕組みは生身の人間とさほど変わらないものだ。もし画像生成AIが誰かの権利を侵害するなら、それは我々人間の創作活動にもあてはまってしまう。

人間は本質的にAIを否定したり排除したり出来ないはずだ。

クリスタという素晴らしいチートアプリの利益を受け取っているのは誰かって話にもなる。同じように「画像生成AIパレット」に関しても既存の枠組み内で利益を享受できれば良いわけだ。

そこに独自のスキルを上乗せ出来るクリエイターが損失を被ることは考えにくい。彼らは常に後出しジャンケンが可能なポジションにいるのだから。

そしてAI（テクノロジー）は純粋であり人間に対して対価を求めたりしない。

無記名の暗号が生み出す創造性すら我が物に出来るのが人間の特権だしね。

CLIP STUDIO PAINT Ver.2.0 無償提供の条件

ワイは2022年7月にCLIP STUDIO PAINT PRO Ver.1.0（無期限版）を導入したが、その直後にVer.2.0のリリースがアナウンスされた。当初Ver.1.0 → Ver.2.0へのアップグレードには課金が必要だった。しかしその後、2022年1月1日以降に無期限版（Ver.1）を購入したユーザーにはVer.2が無償提供されることになった。

クリスタVer.1の利用歴が短いユーザーに対して優遇措置が適用されたわけだ。

「画像生成AIパレット」の撤回でもわかるように、セルシスは良くも悪くもユーザーの声に左右される傾向が強いことがわかる。有り難いと思う反面、企業としてもう少し自信（確信）を持って開発を進めて貰いたいと思った。